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種の絶滅

現在、絶滅の危機に瀕している生物種はかなりいる。
生物が絶滅するのはなぜなのだろうか?
そして、生物が絶滅した場合、どのようなことが起こるのだろうか?
ここでは、それらの問題について考えてみたい。

基本的に、生物の世界は食べる食べられるの食物連鎖で成り立っている。
生物間の食物連鎖の関係がバランスが取れていると、生態系はとても安定した状態になる。
そのような安定な生態系がその中だけで完結している場合は、生物が絶滅することはあまりない。
何らかの新たな要因が、その生態系の外部から加わった時、絶滅の可能性が生じてくる。

生態系を乱す外的要因としては、環境(気候等)の変化と新たな生物の侵入が考えられる。
氷河期になったり、火山の噴火などによって日の光が当たらなくなったりすれば、それらに変化に弱い生物は減ることになる。
新たな天敵が出てきたり、新たな伝染病が蔓延したり、ヒトが特定の生物を狩りつくしたりすることでも、その標的となる生物は減る。
また、それらの変化によって、逆に生存が容易になって増える生物も出てくるかもしれない。
このように、外的要因によって特定の生物がそれまで以上に繁殖したり減少したりすると、その生態系の安定性が崩れる。

絶滅は、その外的要因が直接的に特定種を滅ぼす場合と、間接的に特定種を滅ぼす場合がある。
直接的に滅ぼすというのは簡単で、ある外的要因に対して極端に弱い生物がいたとき、その生物がそのまま絶滅してしまうということである。
強力な伝染病によって種が絶滅するというような場合はこれに当たる。
このような外的要因が直接的に種を滅ぼすケースでは、外的要因が発生してから種が絶滅するまでの期間が短いことが多い。

間接的に滅ぼすというのは、食物連鎖の関係が乱れた結果として生じるものである。
森を半分焼き払ったせいで、その森に暮らしていた動物が絶滅するというのはこれに当たる。
外的要因が直接に影響を与えなくても、生態系のバランスの崩れによって、外的要因を受けなかったような生物が絶滅するということはよくあることである。
生態系のバランスというのはとても微妙で、その生態系内の一つの生物種が多くなったり少なくなったりするだけで、全体が不安定になってしまうものである。
このような過程の絶滅は、上とは異なり、ゆっくりと進行する。
絶滅しそうになっても、場合によっては元通り回復したり、逆に反動で大繁殖したりということもあり得る。

絶滅の脅威という意味では、外的要因が直接的に種を滅ぼす方が、ずっと強い力を持っている。
無敵の生物というのはいないので、これに関しては完全に防ぐことは不可能である。
弱点を突かれれば、どんな生物でも滅び得る。
もちろんヒトでも例外ではなく、例えば、とてつもなく感染力と病原性の高い伝染病が発生して、その封じ込めに失敗すれば、恐らく数ヶ月から数年以内にヒトは絶滅するだろう。
とはいっても、このように直接的に外的要因が種を滅ぼすというのは、かなり稀なケースである(しかし、一度発生すると、多種に渡る大絶滅が起きることが多い)。
現在絶滅の危機に瀕しているような生物のほとんどは(ヒトが狩りつくしている生物以外は)、(ヒトからの)間接的な影響で生存が難しくなっていると考えられる。

絶滅の引き金になるような外的要因は色々あるが、それでもやはり絶滅しやすい生物と絶滅しにくい生物はいる。
何らかの防衛機構を持っている生物、繁殖力の高い生物、進化の速い生物は絶滅しにくい。
例えば、多くの植物は、種の状態で半永久的に生き続けられるので、かなり絶滅しにくい。
一方で、哺乳類の動物は、上の条件のどれも満たしていないものが多く、絶滅しやすい。
実際に現在では、植物が絶滅するという話はあまり聞かないが、大型の哺乳類はかなり危機的な状況にあるようである。

どんな過酷な外的要因が加わっても、生物全部が絶滅するということは起こりにくいと思われる。
生物の中にはとてつもなく生存力の強いものがいる上に、生物自体がかなりの多様性を持っている。
普通では考えられないような環境(高温、放射線、真空等)でも生き残れる生物も知られている。
そのため、仮にヒトが核戦争のようなことを地球中でやったとしても、ごく一部の生物は生き残り、そこからまた新たな生物が進化してくるのではないかと、筆者は考えている。
地球がなくなっても、仮死状態で宇宙を漂いながら半永久的に生き続け(生きていると言えるかどうかは分からないが)、生存できる星を見つけてまた増えるというような生物さえいるかもしれない。

さて、原因はともかく、特定の種が絶滅した場合、どんな影響が出てくるのだろうか?
種の絶滅が起こると元の安定した生態系はもう成り立たなくなる。
その結果、それと連動して、他の生物が滅んだり激減したり、あるいは逆に大繁殖したりすることが起こる。
こうして環境に適応できる生物が選択され、新たな生態系が構築されていくことになる。
このような生物の選択は、生物の進化も促進させるので、新たな種の生物が生まれてくる場合も多い。
結局、種が絶滅することによって、新しい生物や生態系を拓かれていく。

種の絶滅というと、ネガティブな印象を持たれがちだが、生物界の発展には欠かせないものである。
実際に生物の歴史を見ても、大絶滅の後には大進化が起こり、それによって生物は多様性を拡大してきている。
現在、絶滅の危機に瀕した生物を救うということがあちこちで行われているが、それが良いことであるのかどうかは疑問である(そもそも自然に良いも悪いもないが)。
ただ、ヒトにとっては、現在の生態系にできるだけ変わって欲しくないので、生態系を守るということは自らを守ることにもなり、賢いことであるとは言えるのかもしれない。

絶滅というのは生物の宿命なのかもしれない。
どんな生物でもいつかは死ぬように、基本的に生物種でも永遠に繁栄することはあり得ない。
しかし、生物というのは互いに影響を与え合うものであり、その存在が消えても、かつて存在したという事実が消えるわけではない。
昔の生物がいたからこそ、今の生物がいる。
現存している生物種というのは、かつて絶滅していった生物種の分の重みを背負って生きているのである。
そのようななことを考えると、現存している生物種について、改めて考えさせられるところもあるのではないだろうか。