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並列思考

並列思考というのは、2つ以上のことを同時に脳で処理することである。
ここでは、その並列思考の仕組みとその効果について考察することにする。
この並列思考をうまく使うと、時間を有効に利用できたりすることもあるので、それについて知っておくのは決して無駄にはならないだろう。

まず、2つ以上のことを同時に処理する例を挙げてみよう。
クラシック音楽を聴きながら勉強をする、車の運転をしながら話をする、絵を鑑賞しながら音楽を聴く、2人の話を同時に聞く、ぷよぷよで自分のフィールドと相手のフィールドを同時に把握する・・・などがある。
これらを実際にやってみると、とても難しい並列思考もあれば、比較的簡単にできる並列思考もあることに気付くだろう。
なぜ、難しい並列思考と易しい並列思考があるのだろうか?

脳というのは、基本的に特定の処理ごとにCPU(処理装置)を持っているのだと考えられる(実際、脳では処理内容に応じて活性化する位置が異なる)。
音楽を聴きながら話をするといった場合、音程処理のCPUと言語処理のCPUで別のものを使っている。
別のCPUを使うので当然簡単に並列処理できる。
一方で、2つの音楽を同時に聴くといった場合、音程処理のCPU1つだけで2つのことを処理することになる。
そうなると当然、処理が追いつかなくなりやすい。
結局のところ、同じ処理を同時にやるのは非常に難しく、別の処理を同時にやるのは簡単ということになる。

何か一つのことだけをやっているときというのは、その処理に関するCPUを100%まで使えるので、とても楽にできる。
別のことを並列してやる場合は、並列化のための処理が必要になるので100%は使えないが、それでも、それぞれ80%以上は使えると思われる。
なので、よっぽど慣れていないことでなければ、一つのことをやるときとあまり変わらずにできる。
同じことを並列してやる場合、並列化の処理も考えると、一つの処理に割けるCPUは50%以下である。
50%以下となると、半分無意識にやっているようなものなので、よほど熟練していないとできるものではない。
このように、脳での処理の難しさは、1つの処理に対してどれだけCPUを使えるかで決まってくる。

うまく並列思考をするには、一つの処理に必要なCPU占有率を下げれば良い。
このことがいわゆる「慣れ」ということになる。
何度も同じ処理を繰り返していると、脳のCPUの中に処理に関する命令セットのようなものができ、いくつかの段階を経てやっていたようなことが、一発でできるようになる。
初めはCPUを100%使わなければいけなかったようなことが、慣れることで70%でできるようになったりするわけである。
この慣れによってCPUの占有率はかなり下げられる。
例えば、30%で一つの処理ができるようになれば、2つの同じ処理を同時にやっても100%を超えないので、できるようになる。
しかし、3つを同時にとなると、やはり急に難しくなる。
別の処理の場合は、2つでも3つでも、内容さえ重なっていなければ、多少の慣れだけで簡単にできる。

また、これまでの並列思考とは別の意味で難しい並列処理というものもある。
例えば、文章を書きながら、絵を鑑賞するといったような場合である。
処理内容自体は異なるので、並列思考は難しくないのだが、これはできない。
2つの異なる位置にあるものを同時に見ることはできないためである。
このように物理的にできないようなものは、並列思考自体ができても同時に処理することはできない。
ちなみに、ぷよぷよで自分と相手のフィールドを同時に見られないというのはこの問題ではない。
実際にテレビの電源を切ってみれば、テレビ全体を見られるはずである。
自分と相手を同時に見られないのは、情報を処理しきれなくなって、無意識のうちに視野を狭めてしまっているためである。

次に並列思考の効果について考えてみよう。
まず当たり前のことだが、並列思考をうまく利用すれば、時間を節約できる。
別々にやっていたのでは、それらを足した分の時間がかかってしまうが、同時に処理すれば約半分の時間で済む。
ただし、同内容の並列思考になって効率が落ちたのでは意味がないので、処理は重ならないようにするのが良い。
勉強しながら、音楽を聴くなどというのは、うまい並列思考である。
この場合、音楽には歌詞のないもの(クラシック等)を選んで、勉強の方の言語処理に弊害が出ないようにしたほうが良い。
一般に「ながら勉強」は良くないと言われたりもするが、処理内容をしっかり選べば、勉強の効率を落とすことなく、むしろ疲れを軽減しながら勉強することもできる。

並列思考には脳を活性化させるという効果もある。
一つのことだけをやっているときは、特定の脳領域だけが活動していることになる。
もし、その処理が慣れていることであれば、脳全体の活動レベルはとても低くなる。
そうなると、脳の活動自体も維持できなくなって、眠くなったりするわけである。
こういったことが長期に渡って続いた場合、認知症(痴呆)になるという話もある(仕事だけとかゲームだけとか習慣化した生活続けている人は危険)。
そこで、並列思考をすれば多くの脳領域を高いレベルで活動するようにできる。
並列思考をしようとすると、わずかな混乱状態になることがあるが、これは脳にとってとても良いことである。
なので、あまりに簡単なことをやるときは、わざと並列思考になるようにして、脳の活動レベルを上げると良い。
例えば、つまらない勉強などは、他の何かと平行してやるとかえって良い効果を得られることもある。
実際に筆者は、英単語の暗記は、ゲーム(ポケモン)のレベル上げなどと平行してやっていたりした(笑)。

並列思考をうまく生かせば、効率的に時間を使うこともできる。
しっかりと並列思考の性質と効果を理解して、普段の生活に取り込んでいけるようにしたいものである。
それができれば、これまで以上に有意義に人生を送れるようになるかもしれない。